ラスタファリ・ムーヴメントにおける重要なシンボル、ユダのライオンのTシャツです。
力と勝利の象徴であるライオン。
もともとイスラエルの部族のひとつ、ユダ族(ヤコブの4番目の息子ユダの子孫とされる)が象徴としていたそうです。
これは旧約聖書の『創世記』において、ヤコブが息子のユダに与えた祝福の文言に由来しています。
また、黙示録ではイエスその人を”ユダ族から出た獅子”として言及しています。
紀元前5世紀から、そのユダ族の王・ダビデの子であるソロモン王と、その妻シバの女王の子孫を称する王国が繁栄を続けたアフリカのエチオピアでは、王室の象徴として”ユダの獅子”が用いられました。
この、エチオピア帝国=ソロモン朝は、したたかな外交と近代化された軍備によってアフリカ分割を経てもなお独立主権国家として存続し、「アフリカの星」と称揚されるようになります。
一方、18世紀アメリカに誕生したバプテスト教会の黒人説教師たちは、聖書にある「エジプトから王が到来し、エチオピアは、神に向かって手を差し伸べる」(詩篇 68:31)などの記載から黒人と聖書の結びつきを訴え、エチオピアを世界に離散した黒人の母国のように語り、新世界の黒人の間に広まっていきました。
19世紀になると、欧米では聖書から有色人種を排除する目的から、科学者の間で聖書に登場する人種を証明する論争が起こりました。
しかし、研究の過程で古代エジプト人と古代エチオピア人は黒人であり、同一の人種であるという説が浮上。黒人の祖先が人類文明の起源を作ったという考えは、世界中の黒人の尊厳に影響を与え、”エチオピアニズム”として体系化されていきます。そして次第に「エチオピア」とはエジプトを含む全アフリカを指す言葉となっていきます。
1910年代になると、ジャマイカ生まれのマーカス・ガーベイがアメリカ合衆国に渡り、世界黒人開発協会アフリカ社会連合(UNIA-ACL)を組織。パン・アフリカ主義を提唱しました。
当時、カリブの黒人社会に根強く残っていたエチオピアニズムを拡大解釈し、黒人に対してアフリカに帰ることを奨励したのでした。ガーベイの主張はアメリカのみならず、カリブや南アメリカなどの多くの黒人の支持を得ていきます。
そうした中で、カリスマ的な演説活動をするマーカス・ガーベイは、1927年に「アフリカを見よ。黒人の王が戴冠する時、解放の日は近い」という、ラスタファリズムにおいては「預言」とされる声明を発表。
その「預言」は、1930年11月、エチオピアの皇帝にハイレ・セラシエ1世が即位したことにより現実のものとなります。(尚、ハイレ・セラシエ1世は皇帝即位以前はタファリ侯(ラス・タファリ)を称号としており、これがラスタファリ・ムーヴメントの語源となりました。)
この「神の啓示」をきっかけにして、ジャマイカの首都、キングストンでガーベイ主義の布教がはじめられ、初期ラスタファリ運動が始まりました。
このように、ラスタファリ・ムーヴメントは、基本的にはアフリカ回帰運動の要素を持ち、エチオピア帝国最後の皇帝、ハイレ・セラシエ1世を神=ジャーの化身、もしくはそれ自身だと解釈します。
そのためにユダのライオンはラスタファリ・ムーヴメントにおける重要なシンボルとなっていったのです。
ちなみに、1966年、ハイレ・セラシエ1世がジャマイカに来訪したことを契機にしてラスタの思想やメッセージを伝える手段としての音楽、すなわちレゲエが誕生します。
ラスタのミュージシャンやシンガーが、さまざまなラスタのメッセージを音楽に乗せて発信を始めましたが、特にボブ・マーリーは国際的な名声を得るに至り、その音楽と思想は全世界に波及。
数多くの人々に多大な影響を与え、現在では全世界に100万人のラスタファリ運動の実践者がいると言われています。
(なお、ジャマイカの多数派宗教はキリスト教(プロテスタント・バプティスト派)であって、ラスタファリズムを信仰するのは全国民の5~10%前後であるとのこと。)
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